マイルス・デイビス ・生存年:1926年5月26日 - 1991年9月28日 ・出身国:米国 ・主な楽器:トランペット ・主なジャンル:ジャズ ・聴きやすさ:★★★★★ マイルス・デイビスは最も活躍したジャズミュージシャンの一人で、ジャズの帝王などと言われるトランペット奏者です。 また、多くの偉大なミュージシャンをフィーチャーして世の中に輩出し、現在にいたるまで、その影響を受けていない音楽家はいないのではないかと思えるほどです。 マイルス・デイビスは1926年アメリカ合衆国イリノイ州の裕福な家庭に生まれて13歳の誕生日に父親からトランペットをプレゼントされ、18歳で偶然とも言える形で当時のスーパースター、ディジー・カレスピー、チャーリー・パーカーとの共演を果たします。 彼の自叙伝の最初の文面を引用します。 「まあ、聞いてくれ。オレの人生で最高の瞬間はディズとバードの演奏を初めて聴いた時だった。」 この自叙伝、マイルスが1991年に他界して僕はすぐに購入して読み漁り、今も読み返しています。 まずこの出だし、「まあ、聞いてくれ。」僕はこの一言に、マイルスのパーソナリティー、音楽性、人生観、すべてが凝縮されているように感じます。 彼が最初に活躍した1940年代後半から1960年代当時、米国ではまだまだ人種差別も酷いものがありますし、ジャズミュージシャンのほとんどは薬物とアルコール漬けの日々を送っていました。 彼も同様に、人種差別と薬物依存に苦しむ生活を送りますが、この自叙伝を読んでいると、彼の聡明さ、知性、行動力、音楽に対する姿勢など、桁外れの人間性に驚かされます。一言で言えば、とにかく、ものすごくカッコイイんです。 人生の参考にしたいと思えるような名言が、この自叙伝ではいくつも出てきますので、その一部を紹介させていただきます。 Do not fear mistakes. There are none. 失敗を恐れるな、失敗なんてないんだ。 My future starts when I wake up every morning. オレの未来は、毎朝起きた時にはじまる。 I’ll play it first and tell you what it is later. まず演奏するぞ。説明はあとだ。 Learn all that stuff and then forget it. すべて学び、そして忘れろ。 If you don’t know what to play, play nothing. どう演奏するかわからなければ、何もするな。 Knowledge is freedom and ignorance is slavery. 知識は自由。無知は奴隷。 So what ? だからなんだ? このSo whatマイルスの口癖だったそうで、有名な曲名にもなりました。 この曲、もちろん歌なしのインストです。ようは、だからどうした?だとか、で、何? と言った題名の曲を、トランペットで歌っているわけです。 彼の演奏を聴いていると、その言葉の後、僕が勝手に想像してしまうのは例えば、だから何だって言うんだ? 肌の色の違いに何の意味がある? だとか、で、お前は何が言いたいんだ? 言いたいことがあるなら、もっと知識を蓄えてこい。だとか、だからってなんだ? そんなこと気にせずにさあオレの音楽を聴いてみろよ。だとか、そういった意味合いのことを歌っているように聴こえてくるわけです。 これがジャズ!なんだと思います。 歌詞を否定しているわけではありません。歌詞やその意味は聴く側に任されている。それがジャズなんだと僕は思います。 このSo what という曲はKind of Blueというアルバムに収録されています。 ポール・チェンバースの印象的なベースのリフからマイルスのトランペット、そしてその後、ジョン・コルトレーンのテナーサックス、キャノンボール・アダレイのアルトサックス、ビル・エヴァンスのピアノとソロが続きます。それぞれが歴史に名を刻んだ大スターですね、たまりません。 先ほども書きましたが、このようにマイルスがフィーチャーしたミュージシャンの多くはそれがきっかけで大スターになっていきます。 ハービー・ハンコック、チック・コリア、マーカス・ミラー、・・・・枚挙にいとまがありません。あのジミ・ヘンドリックスもマイルスに音楽を教わって大きな影響を受けました。 このような流れは、もちろんフィーチャーされたミュージシャンそれぞれの才能や努力、あるいは世論だとかコマーシャリズムなども影響したと思われます。しかし僕は、マイルスにフィーチャーされて彼と演奏したその経験こそが、彼らのその後の演奏スタイルや音楽に対する姿勢、もっと言えば人生観のようなものに大きな影響を与えたのではないかと考えます。 長くなりましたが、僕のお勧めジャズ・ミュージシャン特集は、これからジャズを聴いてみようという人などを主な対象としていますが、とにかくこの「Kind of Blue」は必聴です! 全世界でのセールスは1,000万枚を超え、今でもまだ売れ続けている、ジャズ・アルバムの金字塔なんです。 お勧め楽曲について紹介させていただきます。 まず1曲目は「My Funny Valentine」です。多くのジャズメンが演奏しているジャズスタンダードの名曲ですね。1964年ニューヨークでのライブ録音です。 むせび泣くようなフレーズ、叫ぶロングトーン、鬼気迫るマイルスらしい演奏ということでアップしました。 2曲目は「Milestones」です。 曲のコード(和音)進行からさまざまなスケール(音階)を駆使してアドリブするモダン・ジャズを発展させ、モード(旋律・旋法)を用いて演奏されるモード・ジャズの走りと言われるジャズ史にとっては重要な曲です。 でもそんなこと気にせず、疾走感のあるテーマからのまだまだモードに慣れてないキャノンボールのアルト、モードの未来を宣言するようなマイルスのトランペット、そしてその後の方向性を感じさせるコルトレーンのテナー、どれをとっても聞き応え十分ですので、是非聴いてみてください。 3曲目はさきほどご紹介した「So What」です。 僕の55年の人生で、一番聴いた曲の一つです。聴けば聴くほど味が出て、聴くたびに新たな発見がある。飽きる暇などありません。 4曲目は「Mr. Pastorius」 動画左側のマーカス・ミラーが35歳という若さで他界したベーシスト、ジャコ・パストリアスへの想いをこめて作った曲で、この動画はマイルスが他界する2年ほど前の1989年頃のものだと思います。 それにしてもどうです?このマイルスのオーラ・・ 今ではレジェンドベーシストのマーカス・ミラーが小僧のようにみえますね。 チャーリー・パーカーやディジーのことも本人が少し語ってますね。 マイルスは自分でも言っていますが、口下手なんだそうです。 アルコールとドラッグの影響でしょうか、すごくしゃがれた声で言葉少なに話しています。が!・・・ 演奏が始まると・・・ 最初の数小節で、いや、最初のワントーンでマイルスの世界に引き込まれていきます。 その前にこの始まり方です! バンドのメンバーを見てカウントなどとってません。唐突に演奏を始めます。ついてこい って感じ、カッコいいです!! (マーカス・ミラーの作曲なんですけどね・・) そしてBメロのところ、観客に背中を向けて下を向いてCマイナーコード進行のサビで泣きの叫び。たまりませんねー そして最後、5曲目は「Mystery」 マイルス最後のレコーディングアルバムで、リリースした時はすでに他界した後の1992年です。ヒップ・ホップです。 マイルスは生前、「オレをジャズ・ミュージシャンと言うな」としきりに言っています。カテゴライズされることをとても嫌っていたようです。 そしていろいろなスタイルの音楽をその時代に合わせて作り上げてきたわけです。 このアルバム「doo - bop」お勧めですよ。 彼は生前「年に1日だけでもいい、すべてのミュージシャンは自分の楽器を置いてデューク・エリントンに感謝を捧げるべきだ」と言ったそうです。 僕のアンサーは「イエス、マイルス!あなたにもね」です。 マイルス・デイビス自叙伝を読んでみようという方は、コチラからどうぞ。
top of page
bottom of page